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作品を届けるために

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海外の出版・流通事情を垣間見ることのできる良いコラムだと思います。

ご存知の方も多いでしょうが、ここにもある通り、海外と日本の出版・流通のシステムは異なる部分を多くもちます。

とくに大きなトピックとして、「再販売価格維持制度」に対する姿勢というものが挙げられるでしょう。

イギリスをはじめとして、諸外国ではこの制度を採らない、あるいは限定的に運用するというところが多いです。

引用したコラムではアメリカとイギリスの書店事業を中心に取り上げていますが、どちらも日本とは異なる「書店による買い切りの仕入れ・値付け(値引き)」からくる業界の動きが見渡せます。

 

書店取次が各出版社から書籍を買い付け全国の書店に配本する、書店は定価での販売を約束するかわりに一定期間が過ぎても売れなかった在庫は返品することができるといった日本の出版・流通事情と比べてみると海外の状況はなかなかシビアに映ります。

当然、どちらのシステムにもメリット・デメリットが存在し、その国々の経済的、文化的な背景も関係しているので一概にどちらが良いということはできません。日本では「再販制度」の見直しも幾度となく叫ばれてきましたが、イギリスの独立系書店の状況を見るに、よほどうまくやらない限り大手資本の独り勝ちとなる可能性が高そうです。

 

私がこのコラムから得たものはこうした出版業界を取り巻く諸問題に対する難し気な素人考えだけではありません。

それは作家による旺盛なプロモーション活動と独立系書店に対する興味です。

この二つの要素はどことなく、音楽業界におけるインディーズレーベルを思い起こさせます。

楽曲制作・販売、プロモーションとしてのライブ活動、そしてそれを行う人員のマネージメント。

音楽の世界だとそういった最初から最後までを自分たちで担う形態が出版よりも活発に思えるのです。隣の芝生は青く見えるのでしょうか。

もちろん業態の違いもありますし、最終的にメジャーへと移行を目指すというケースもあるわけで、簡単に並べることはできないのでしょうが、そういったインディーズ業界が文芸界隈でも賑やかだったら面白いだろうなと考えてしまいます。

同人活動がそれにあたるのかもしれませんが、プロモーションの場、そして作品を流通させる販路が狭いように思います。「売れる」ことはインディーズ音楽よりもさらに稀でしょう。

なにより先述した日本の出版・流通システムはあらゆる書籍をメジャーとして扱うものです。その外側というものはなかなか想定されていないように思います。

何か別の仕方で本を届けられたなら。そう考えると非常に困ったような、しかしワクワクした気分になりませんか?

 

(ザック石橋)