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電子書籍で文芸誌

2018年に向けて「生え際」をリブートしようと、新たに取り組んでいた電子書籍の作成がいよいよ大詰めを迎えました。

CSSはおろかHTMLすらまともに扱えない有様でもなんとか形にはなりそうです。

 

作り始めてまず驚いたのが、作成ツールの豊富さです。

以前、調べてみたときには縦組みに対応したEPUBがまだ存在しなかったことも関係してか、ほとんど見当たらなかったように思います。

今ではtxtファイルやwordファイルをEPUBに変換するツールなどもあり、とても簡単に作成できるようになりました。

文字が規則的に並ぶ書籍を作るのであればこれで充分です。

 

しかし、そうしたツールでは1ページのなかで字体が変わったり、記事を囲んだり、縦書きと横書きを混在させたりといった

特殊なレイアウトを組むのは難しいようです。

今回、作成を始めてみて最も悩んだのがこの問題でした。

現状では専門的な知識がない場合、電子書籍は紙で作るよりも意外と自由度が低いようなのです。

これは電子書籍の表示形式に関する仕様がネックになっているのでしょう。

 

リフロー型電子書籍とフィックス型電子書籍 (JEPA日本電子出版協会ホームページ「いまさら聞けない電子出版のABC ebookpedia」より)

 

上記の記事にあるように、テキストを中心とする書籍に向いているリフロー型は受け手側で情報が変更・最適化されるため、

受け手の環境によってレイアウトが崩れてしまいます。

一方で、画像を中心とする書籍に向いたフィックス型は文字や行間が変わらない分、表示画面の小さなデバイスでは読みづらい。

もちろん、読みづらい部分は読者にページごと拡大してもらおうと割り切ってしまえばフィックス型のほうが製作者の意図に近い書籍ができるのですが、マーカーやページ間のジャンプなど電子書籍ならではのメリットは薄くなってしまいます。

まさに痛し痒しといったところです。

文芸誌はその性質上テキストを中心に構成されますが、ただ単純に文字が並んでいるだけのものではありません。

誌面のデザインは読む行為のデザインへと繋がります。

そういった意味で、テキストはリフロー型、画像やイラストはフィックス型といった、この二つの良点をあわせもつハイブリッド型が普及してくれれば有難いのですが、どうもまだまだのようです。

 

今回作成した『生え際 Vol.1』はそのあたりをどうにかしようと足掻いてみました。

歪さは残りますが、収録内容とともに注目して頂けると嬉しいです。

 

(ザック石橋)